
行政書士試験の勉強で行き詰る科目の1つに「記述式問題の対策」があります。5肢択一式の問題と違い、過去問で出題された問題と同じ問題は記述式では出題されないからです。民法・行政法の両方とも、行政書士試験での試験範囲は広く、どこから出題されるか分からない記述式問題を狙って対策する事は、非常に難しいからです。
その狙って対策が難しい記述式問題ですが、全く対策せずに捨ててしまう事は非常にもったいない事です。日頃から記述式問題を意識した勉強を取り入れる事で、配点割合の高い記述式問題の「部分点」を狙っていくことは十分可能だからです。
この部分点をとる為に必要な3つのキーワードが試験当日に頭に浮かぶよう、「予想問題集を使った勉強方法」と、「5肢択一式の過去問」を使った勉強方法をご紹介していきます。
勉強前に読みたい1冊
行政書士試験は「60点」で合格できる試験です。行政法・民法・憲法・商法・会社法・一般知識と試験範囲は広いですが、全てを完璧に覚える必要はありません。試験勉強を始める前に「どうすれば試験に合格するのか?」「効率的に勉強する為には何を勉強すればいいのか?」など、手当たり次第に勉強するのではなく、ある程度の目印を見つけて勉強することが効率よく合格する近道です。
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記述式問題の配点と部分点
まず、行政書士試験における記述式問題の「配点と部分点の仕組み」について見てみましょう。
記述式問題の配点
記述式問題は、民法から2問と行政法から1問出題されます。1問あたり20点の配点がありますから、合計3問(60点)が記述式問題の配点になります。60問(300点満点)で構成される行政書士試験において、「3問で全体の20%の配点」を占めていますから、記述式問題の重要度はかなり高いと言えます。
部分点の仕組み
記述式問題は例年、3個程度のキーワードをつなげて40文字程度で答えを書かせる問題形式で出題されています。重要なのは、この「3個のキーワードが頭に浮かぶか」にかかっています。1個でもキーワードが浮かんで、後はもっともらしい文章を40文字程度で書きさえすれば、部分点として点をもらえます。キーワードが2個頭に浮かべば上出来で、さらに3個とも浮かべば完璧です。
部分点の詳細は試験が終わっても公開されませんが、「合否通知書」を見ると、部分点がある事は間違いありません。
Xは、Y県内で開発行為を行うことを計画し、Y県知事に都市計画法に基づく開発許可を申請した。しかし、知事は、この開発行為によりがけ崩れの危険があるなど、同法所定の許可要件を充たさないとして、申請を拒否する処分をした。これを不服としたXは、Y県開発審査会に審査請求をしたが、同審査会も拒否処分を妥当として審査請求を棄却する裁決をした。このため、Xは、申請拒否処分と棄却裁決の両方につき取消訴訟を提起した。このうち、裁決取消訴訟の被告はどこか。また、こうした裁決取消訴訟においては、一般に、どのような主張が許され、こうした原則を何と呼ぶか。40文字程度で記述しなさい。
上記の問題であれば、問われている3つのキーワードは以下の通りになります。
裁決取消訴訟の被告はどこか:「被告はY県」
一般にどのような主張が許され:「裁決固有の瑕疵のみが主張できる」
こうした原則を何と呼ぶか:「原処分主義」
この、「被告はY県」「裁決固有の瑕疵のみが主張できる」「原処分主義」の3つのキーワードのうち、1つでも書ければ部分点がもらえます。
記述式問題の過去問の出題傾向
記述式問題の過去問から、行政法と民法それぞれの出題傾向を見てみましょう。
行政法の記述式出題傾向
過去10年では、行政事件訴訟法から6問、行政法総論から3問、地方自治法から1問出題されています。この傾向から見ると、行政事件訴訟法の分野は出題の可能性が高いと言えます。
2018年 | 義務付け訴訟と不作為の違法確認訴訟 (行政事件訴訟法) |
2017年 | 行政上の義務の履行を求める訴訟 (行政法総論) |
2016年 | 秩序罰(行政法総論) |
2015年 | 原処分主義(行政事件訴訟法) |
2014年 | 公の施設(地方自治法) |
2013年 | 狭義の訴えの利益を欠く場合の判決 (行政事件訴訟法) |
2012年 | 形式的当事者訴訟 (行政事件訴訟法) |
2011年 | 即時強制(行政法総論) |
2010年 | 事情判決(行政事件訴訟法) |
2009年 | 取消判決の拘束力 (行政事件訴訟法) |
民法の記述式出題傾向
過去10年間では、債権総論から6問、債権各論から4問、物権と担保物権から4問、親族法と相続法から3問、総則から2問、総則と債権各論の混合問題1問となっています。
この傾向から見ると、債権総論と債権各論で20問中10問を占めています。今後も債権分野からの出題の可能性が高いと言えます。
2018年 | 成年被後見人 (総則) | 贈与 (債権各論) |
2017年 | 債権譲渡禁止特約 (債権総論) | 損害賠償請求権の消滅時効等※不法行為 (債権各論) |
2016年 | 売主の担保責任 (債権各論) | 離婚に伴う財産分与 (親族法) |
2015年 | 占有の性質の変更 (物権) | 嫡出否認の訴え (親族法) |
2014年 | 詐害行為取消権 (債権総論) | 他人物売買における解除権 (債権各論) |
2013年 | 無権代理人への責任追及 (総則) | 盗品の回復 (物権) |
2012年 | 検索の抗弁 (債権総論) | 遺留分減殺請求 (相続法) |
2011年 | 代価弁済と抵当権消滅請求 (担保物権) | 表見代理と使用者責任 (総則・債権各論) |
2010年 | 弁済による代位 (債権総論) | 不法行為と相殺 (債権総論) |
2009年 | 連帯保証 (債権総論) | 177条の「第三者」 (物権) |
予想問題集を使った勉強方法
記述式問題の対策という面だけで見ると、記述式の過去問を解くことには意味がありません。(同じ問題が出題される可能性がほぼ無いからです)
そこで、記述式問題に慣れるという意味で、市販の記述式予想問題集を使って勉強する方法があります。私は「LEC」が出している予想問題集を使って勉強したので、ここではLECの問題集をご紹介します。
配点の目安として、部分点がもらえるような重要ワードも問題ごとに書かれていますので、重要ワードを重点的に覚えるだけでも十分記述式対策になると思います。
LECの記述式問題集はこんな内容
LECの記述式問題集には、オリジナル問題が約120問収録されています。出題の可能性が高い重要論点を凝縮して作られていますので、記述式の対策としても役立ちますし、全体の知識を整理して理解する事にもつながります。
【LECの記述式問題集の内容】
- 民法の記述問題:約65問
- 行政法の記述問題:約30問
- 憲法の多肢選択式問題:約10問
- 行政法の多肢選択式問題:約15問
過去問(5肢択一式)も記述対策になる
こちらは、毎日コツコツ対策といった感じですが、5肢択一式の問題をしっかり理解する事も記述式対策になります。なぜなら、過去にでた5肢択一式問題の中の選択肢の1つと同じような内容が、後の年度の試験の記述で出題されることがあるからです。
5肢択一式でも記述でも、重要論点を理解しているかを試験問題は聞いてくるという点では同じであり、今後も、過去の5肢択一式問題を理解していれば正解できるような問題が記述式で出題される可能性は十分にあると思います。
5肢択一式の過去問を解く時は、解説やテキストを見ながら、1つ1つの選択肢をしっかり理解する事を意識しながら日々勉強を進めてください。
試験当日に記述式問題を解く時のコツ
まずは何について聞いているのか考える
問題文を読んで、まずはどの分野の話なのかを読み解きます。これができなければ、全く書けませんので、日頃から上記のような問題集で訓練しておきます。
例えば行政法の記述であれば、行政手続法の話なのか、行政事件訴訟法の話なのか等です。さらに言えば、取消訴訟の話なのか、義務付け訴訟の話なのか等を読み解く事です。問題文を読んで取消訴訟の話だと分かれば、後は勉強した重要ワードや条文等を思い出して40文字につなげるだけです。
諦めずに、粘り強く40文字の文章を作る
試験当日に記述式の問題文を読んで、問われているキーワードが1つでも思い出せれば、とりあえず後のキーワードが分からなくても40文字の文章を書いてください。多少文脈が変でも構いません。キーワードさえ1つでも正解すれば、部分点がもらえる可能性があるからです。
また、ハッキリ分からなくても何か書いて下さい。例えば行政法の記述で「訴訟の話」の問題であれば、訴訟名を聞いていくる可能性が高いです。行政事件訴訟法の取消訴訟や義務付け訴訟、差止請求等、何か書けば正解するかもしれません。
あとは、極力漢字で書いて下さい。例えば、民法の「瑕疵担保責任」を漢字で書けますか?これに関しては、記述の問題集を解く時に実際に紙に書くようにして、分からない漢字は覚えるようにしてください。(ひらがなでも点をもらえる可能性はありますが、40文字に文字数制限もありますから、漢字で書けるにこした事はありません。)
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まとめ
行政書士試験の記述対策は、「記述式予想問題集」と「5肢択一式の過去問」を使って、普段から対策して下さい。重要条文や要件が頭に浮かぶように繰り返し勉強し、後は浮かんだ言葉を上手に40文字にまとめられるよう、普段から40文字で書く練習も必要です。また、「瑕疵担保責任」など、普段書かないような単語は、漢字で書けるようにしておく事も必要です。